2007年09月

死者は眠らない +コラム(植毛)

揺すっている。
「どうもこうもないよ。テレメ―タ―を破壊したような痕跡はなかったし、いたずらのようだな」
「いたずらか…、区役所が言ってきたことと何か関係はあるのかな?」
 早瀬は、とりあえずほっとしたようだった。
「ないんじゃないのか。タイミングが良すぎるよ。電話の応対でもそんな口振りじゃなかったみたいだし、大体、本当に破壊されればもっと大変な騒ぎだよ。それに、何のためにそんなことをするのか、今のところそれもまだわかっちゃいない」
「そうか。で、トラブルの原因は何だったんだ」
「結論から先に言うと、北村さんがうまく修正しろってさ」
「またか―、簡単に言ってくれるけど、修正も楽じゃないんだ」
「何だか当たり前のように言うね」
「そんなに目くじら立てるなよ。こういうこともあるんだよ。それだけ仕事を取るというのは、大変なことさ」
「信じられん。自分のやっていることがどういうことなのか、わかってるのかい?」
「考えるまでもないじゃないか。サラリ―マンである以上自分の将来のことさ。君は、北村さんの独立の噂を聞いたことがあるだろう。あの人が何故転職したか、知ってるかい?北村さんは、この会社をスプリング・ボ―ドとしか考えてないよ」
 朝倉は、しばらくじっと早瀬の顔を見つめていたが、
「君は、北村さんを見てどう思う? 会社に利用されていると思うかい」
 と言った。
「そんなふうには思わないけど、ただあまり大事なことは話さないね。尤も、誰でもそうだけど…」
 朝倉は、その言葉にふと思い出した。
「そういえば…、腑に落ちないことがある。このNOx計なんだが、単純な故障だけではないような気がする。何となく、他に裏があるように思うんだ。機械の古さの話になったら、急に北村さんの態度が変わったんだ。古くなれば、調子が悪くなるのは当たり前の話だろ。君は、どう思う?」
「当時俺は、北村さんと同じように紀井電子の製品を推したわけだけど、コスト面で最初から諦めていたんだ。大東電子よりも相当高かったからね。だが、それが逆転したということは、どういうことなんだ? 紀井電子だって、いくら競合といっても自分のところの採算ベ―スというものがあるだろう。そんなに下げて本当に採算が取れるのか、赤字覚悟で納品する意味がどこにあるのだろうとか、考えるといろいろ疑問はあったが、結局、うやむやになってしまったんだ。なかには、橘さんの色で会社の役員を落としたんじゃないかとか、そんなことまで言う連中もいたがね。もっともそれは、大東電子を推していた連中だけどさ」
「で、どうだったんだい」
「何が?」
「その…橘さんだよ」
「あはは、そんなことわかるわけないじゃないか。橘さんが気になるのかい?」




コラム(植毛)
植毛というのは、どういうものなのでしょう。私は詳しくは知りませんが、直接、皮膚に髪の毛を植え込むのでしょうか。私は、植毛よりも髪の毛に人工の毛を結ぶ、昔からのやり方のほうが無難なような気がします。しかしこの方法は、自分の髪の毛が伸びてきて髪の毛をカットしますと、その人工の毛もカットされてしまうことです。
しかし、安全面では、全く心配のない方法です。確かに植毛よりも、かけたお金がもったいないような気がしますが、皮膚を傷つけないかとか、健康面での心配は全くないので、安心です。それぞれその人の考え方次第だと思います。植毛がいい人は、植毛すればいいし、植毛が嫌な人は、他の方法で、髪の毛が増えたようにすればいいと思います。自分に合ったやり方で、やればいいと思いますよ。



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死者は眠らない 続編+コラム(美容整形)

んだ。確かに、チャ―トなんか見たって騒音計の針は動いた通りにしか記録されないわけだから、尤もなんだが…」
「すると、仕事上のことですか?」
「そうだよ、彼の家には、いずれ近いうちに行かなければならないんだ。自宅に分析ファイルを持って行ってると思うから、何なら君が取りに行ってくれないか。家の人に聞けば、たぶんわかると思う。彼は、そういうことに関しては几帳面だったから、引き出しの中にでもしまってあるんじゃないか。それと…さっきのことは、もう一度昭和工業に行くなり何なりして、急いで調べる必要があるだろうね」
「ええ、わかってます。そこで、早速といっては何ですが、北村さんに聞きたいことがあるんです。さっき会社を出る時にアベニ―ルがありませんでしたが、何でも小菅さんが修理に出したとか…」
「ああ。ブレ―キを踏んだ時、何となく重く感じると言って、いつもの所へ持って行ったよ」
「その時、フロントフェンダ―とか、バンパ―とか、どこでもいいんですが、何かキズのようなものはありませんでしたか?」
「キズ? そんな軽いもんじゃなくて、右のフェンダ―の辺りとサイドモ―ルがへこんでいたよ。何かに当たって擦ったんじゃないかな。それが何か?」
「いえ、ちょっと聞いてみただけです。それは、いつ頃の話なんですか」
「なんでも、昨日の夜とか言ってたな」
「昨日の夜!」
 朝倉は、驚いたように北村の顔をじっと見た。そして小菅と別れてからのことを思い出していた。やはり、ゆかりの言うように舞い戻ったのだろうか。
 朝倉は、次第に、あの時の目撃者を探そうという気持ちになっていった。


 やがて風まじりの強い雨も小降りになり、会社に戻ると朝倉は、北村に言われてキャピラリ―管の在庫を確認するために、まず倉庫へ向かった。倉庫といっても、使わなくなった古いビルの一室を改良して内側にペンキを塗り直しただけの物置きのようなものだった。
 外に回ると、どこからか屋根をつたって雨水が漏れだし、それはジャ―ジャ―と音をたてながら、地面を叩きつけていた。薄汚れたそのビルの壁に沿って歩いていると、傘をさして駐車場から戻ってくる早瀬涼一にばったり出会った。
「どこにいたんだい、北村さん怒っていたぞ。おかげで皮肉ばかり言われたよ」
「ちょっと…。後で話すよ。で、どうだった? テレメ―タ―のほうは…」
 早瀬は目を細め、神経質そうな顔をした。だが、オ―ル・バックに近い髪型に加え、彫りが深く、日本人離れした顔立ちのせいだからかもしれないが、何事にもク―ルにみえる。
「それが…、出掛けに変なFAXが届いてな」
 そう言って朝倉は、一通り早瀬に起こったことを話した。
「それで…」
 早瀬は、先を促した。ポケットに左手を突っ込み、寒そうに背中を丸めながら、身体を




コラム(美容整形)
美容整形に興味はありますか。ちなみに韓国では、美容整形が盛んだと聞いていますが、あなたはどうですか。美容整形したいと思っていますか。簡単な整形で、毎日の生活が少しでも変わるなら、美容整形も悪くはないかもしれませんね。例えば、日本人には一重まぶたが多いのですが、これは劣性遺伝だと言われています。まぶたの上の皮膚が厚いことが原因で、一重まぶたになっていることもありますから、この部分の脂肪を取ることによって、目元がもっとはっきりするようになると思います。これだけでも随分違ってきます。目尻が下がっている人には、これだけの美容整形だけでも効果があるのではないかと思います。あまり大がかりな美容整形には反対です。歳を取った時に、崩れるような気がするからです。だから簡単なちょっとした改善程度の美容整形なら、悪くはないと思っているほうです。


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死者の結婚式 続編+コラム(生命保険)

か。久保田さんが事故に遭われて、所轄の刑事があなたに何を聞いたかということは、当然、我々の耳にも入っているんですよ。久保田さんに知られては困るようなことがあったんじゃないのかね!」
 北村は身体を震わせながら、               
「そんなこと、あるはずがないじゃないですか!」    
「そうですか。この問題は、あなたがたが考えているほど単純ではないかもしれませんよ。実は、一人の女性が自殺していましてね。それがこの問題とどう係わっているのか、あるいは、全く無関係なのか。詳しく調べてみないと何とも言えませんが、少なくとも今は、そのことだけお伝えしておきます。今日のところは、お引き取りいただいて結構ですよ」
 小林の細い手がドアのほうをうながす。北村は唇を震わせ、さらに何かを言おうとしたが、小林は相手にしなかった。一時間後、二人は、車の中にいた。
「まずいことになったな。最悪だ。デ―タ的には問題ないと思うが、気にいらんな」   北村は舌打ちしながら、ハンドルを握っていた。      
「一体、何の目的でこんなことをしたんでしょうね」
 朝倉の口も重かった。                  
「さあね、わからんよ」                  
「会社に恨みを抱く者の仕業でしょうか」          
「……」                           
 北村は答えなかった。朝倉は助手席に深く身体を沈めながら、考えていた。もし、起訴ということにでもなったら、俺の立場はどうなるだろう。あいつは、分析をいい加減にやった男だと陰口を叩かれるに違いない。死んだ久保田だって、それは同じだろう。いや、それだけでは済むまい。会社としての信用も丸潰れだ。       
 そこまで考えて朝倉は、はたと思った。久保田は、数字の書かれた紙切れをしっかり握りしめていたのだ。しかも引きちぎられた跡があり、おそらく久保田は最後の力をふりしぼって抵抗したに違いない。もしかすると昭和工業と久保田の事故死との間には、何か関係があるのかもしれない。それを北村に聞くと、彼は、一瞬、何か考えるような顔をしたが、すぐに頭を振り、わからないと答えた。そして、                「俺は、久保田君のことを聞かれる度に不愉快になる。君は、普段、コ―トの、それも一番下についているボタンをかける習慣があるかい? これが第一ボタンや第二ボタンだったら話は別だが、膝の辺りのボタンが取れていたって気がつかないもんじゃないかな。仮に気づいても、不便に感じなかったら、それまでさ。まさか、それが久保田君の事故現場で見つかるとはね」     
 北村は、困惑しきった表情で、視線を朝倉に投げた。    
「ええ…二日前につけたものであれば、普通は取れませんよ。ところで久保田さんとは、どんなことで言い争いになったのですか?」
「それは君も知っていると思うが、もうすぐ経済産業省の立ち入り検査があるだろう。彼は、全分野にわたって修正した箇所を調べるなんてとても時間的に無理だから、予想される分野に絞ったらどうかと言うんだ。しかし、だからといって、騒音・振動の分野を全く見直さないというのも心配じゃないかって俺が言うと、彼は、それは、いいって、頭から決めつけるんだよ。おそらく係官が見ても、わからないだろう、っていうのが彼の意見な



コラム(生命保険)
生命保険にも、いろいろな商品があります。がん保険や生活習慣病や生命保険まで、種類は豊富です。しかし、あまり数を多く入る必要はありません。却って損をするだけです。保険というのは、所詮保険です。そして保険会社が結構儲かる仕組みにできています。そういうことを考えると、必要最小限が良いです。それよりも必要なのは、現金です。個人年金保険というのがありますが、インフレになった時、どれだけ役に立つかわかりません。これからの時代は、インフレになっていく時代です。そう言う時代には保険ではなく、もっと適した商品があります。保険に入るとしたら、生命保険1つだけでいいでしょう。最後の葬式・墓代という考えで充分です。

suteru1 at 22:28  この記事をクリップ!

死者の結婚式 続編+コラム(結婚相談所)

れて、北村も後に続く。階段は光ったように雨で濡れており、所々靴の泥がついて薄汚れていた。それを上り、生活安全部のドアを叩いた。
 しばらくすると、安藤刑事が姿を見せた。ごつい手を差し出しながら、会議室へと案内する。部屋に入ると、すでに銀ぶちの眼鏡をかけた小林が椅子に腰掛けて脚を組んでいた。
 朝倉と北村は、肩を丸くしながらテ―ブルをはさんで向かい側の椅子に腰を落とした。取調室に比べると幾分広く、電灯も明るい。安藤は小林を紹介すると、北村は立って丁寧に名刺を渡した。続いて安藤は二人に向かって、
「久保田さんがあんなことになって、何と申し上げたらよいか…。それにしても、人の死というのは、わからんもんですなあ。昨日は、あんなに元気にしておられたのに…」
 低い声音だった。
「ええ、私も驚きました。ところでその久保田なんですが、どんな話をされたのでしょうか? それと、ちょっとうかがいますが、小林さんがここにこうして居られるということは、我々は何か法律に違反し、これはそのための捜査だという意味なんでしょうか。どうも私には、その辺のところが理解できませんが…」
 北村は、興奮気味だった。早くも額には、汗がにじんでいる。
「労働安全衛生法や作業環境測定法の解釈によれば、そういうことになりますかね。ここでは、その可能性があるとだけ申し上げておきます。だから、小林さんにもこうしておいでいただいているわけです」
「そんな奥歯に物がはさまったような言い方じゃわかりませんよ。もっと具体的に言ってくださいよ。仮にも私は、この会社の分析については、全責任を負っている立場なんですから…」
 安藤刑事は北村の顔を見据えながら、ちらっと小林のほうをうかがった。そして、彼がいいだろうと顎をしゃくるのを見て、安藤は言った。
「実は、一週間ばかり前に、匿名で電話がありましてね。内容について詳しくは言えませんが、蓼科国土開発では測定したデ―タを改ざんしたり、いろいろ不正が行われているから調べてほしいというものでした。もちろん、それだけでは我々としても、はい、わかりましたと言うわけにはいかないので、もっと詳しく聞くと同時にそのことに対する裏付けも取りました。その結果、調査の必要があるということになったのです」
「それが…昭和工業の件だったと、そういうことですね!」
 安藤は頷く。思わず北村は、う―んと言って腕を組み、天井を仰いだ。そして、再び視線を安藤に向けると、
「デ―タの改ざんなんて、とんでもない話です。この昭和工業に限らず、いろいろな分析をやっていますが、基準値を超えることはまずありません。我々はその通りに報告していますし、定期的に行われる厚生労働省の立ち入り検査にも、ちゃんとクリア―しているじゃありませんか」
 北村の勢いに、一瞬、安藤は怯んだ様子だった。手をぱたぱたさせて、窮屈そうな首の辺りに風を送り、          
「何だか、暑いですなあ」
 と言って、それとなく小林の顔をうかがう。すると急に態度を変え、        「理屈はそうですがね。しかし、あなたは我々に何か隠している事があるんじゃないです




コラム(結婚相談所)
結婚相談所という名前は、昔からありますね。あなたは、結婚する時、結婚相談所を利用しますか。又は利用したことがありますか。結婚相談所というのは、便利ですよね。出逢いは何も自然である必要はないと思います。結婚相談所は、結婚したいと思う男女がいて、その紹介を受けるわけだから、こんな合理的な場はないと思っています。今は、サークルとか、自然な出逢いも用意されていますから、結婚相談所というのは、どうもなんていうこだわりは不要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

suteru1 at 22:37  この記事をクリップ!

死者の結婚式 続編+コラム(脂肪吸引)

割れてみろ、朝倉君、ただ働きだな。やれやれ、余計ついでにまたひとつ面倒なことを思い出しちまったよ。これから神田警察署に行かなければならないんだ。君も一緒にな」
「またですか」
「久保田君があんなことになってしまったから、代わりに呼ばれているんだ。全くついてないよ」
「警察は、昭和工業の何を問題にしているんでしょうね」
「さあ。自宅から見つかったという通帳と何か関係でもあるのかな。さっき刑事は、久保田君はいろんな会社から金を受け取っていたと言ったな。こそこそと隠れて何をやっていたかは知らないが、その一つが昭和工業だったんじゃないのか? 」
「だけど、労働基準監督官が一緒というのも解せないですよ」
「君は警察に呼ばれた時、その辺のことを聞いたんだろ? 何、それどころじゃなくて聞かなかった? 駄目じゃないか」
 朝倉は、口を尖らせ、むっとなった。
「だから僕は、あの時、再測定をお願いしたはずですよ。しかし、聞き入れてもらえなかった。こんなことになるんだったら、思い切って再測定すればよかったんですよ」
「要は、君がサンプリングを正しくやりさえすればこういう問題は起きなかったんだ。最初にチャ―トを見た時、明らかにこれはサンプリングに問題があったなとわかったよ。しかし、やり直したところで問題になるようなことは何もないだろうと判断したんだ。それは、久保田君も同じ考えだったよ」
「すいません。サンプリングについては、僕のミスです。それは認めます。だから尚更、再測定したほうがいいと思ったのです」
「今更それは無理だから、何があってもこのまま押し通すしかないよ。松原君は、途中、どこかで降ろせばいいだろ」
 このまま押し通す…か。朝倉の頭の中に、あの取調室で椅子にふんぞり返って俺の表情をじっとうかがっていた小林の顔が浮かぶ。しかし、もとはと言えば、俺が駄目だと言っているにもかかわらず、シンナ―の布切れをテドラ―バッグの吸引口に近づけたあの女がいけなかったんじゃないのか。
 それにしても、一体誰なんだ。五ヶ月も経ってこんなことをタレこんだ奴は…。それに目的は何だろうか。自分の落度だけの問題なのか。しかし、いずれにしろこのために環境計量士としての自分の立場が脅かされてはならない。絶対、明らかにしてやる。
 朝倉は、それらのひとつひとつが癪にさわった。


 外は、細かい雨が激しく降っていた。都会の汚れた空気は、この雨ですっかり洗い流されるに違いない。北村は、松原と運転を代わると、ゆっくり車を滑らせた。雨は風に舞い、オフィスビルのコンクリ―ト壁を斜めに容赦なく叩きつけている。
 それは芝公園のほうでも同じだった。松原をその近くで降ろすと、細い路地に入った。昼間だというのに、外は暗く、時折、車のテ―ル・ランプが目に止まる。
 まもなく神田警察署に着いたが、雨はいっこうに止む気配はなく、驟雨という天気予報が完全に外れた形だった。朝倉は先に車を降りると、玄関のほうへ走っていった。少し遅



コラム(脂肪吸引)
脂肪吸引について、内臓脂肪がたくさん蓄積した場合、脂肪吸引というのは、効果が
あるかもしれませんね。ただ痩せるという目的ではなく、治療として脂肪吸引が必要ならば、止む得ないかもしれません。しかし個人的にはそういう治療行為は好きではありません。何らかの運動をするなどして、内臓脂肪は減らしたいものです。しかし、この脂肪、ほんとに嫌なものですね。これも現代病の一種なんでしょうね。

suteru1 at 22:11  この記事をクリップ!

死者の結婚式 続編+コラム(転職サイト)

「もちろんだよ、どうして?」
「寺井さんは、ちょっと横柄じゃないですか。橘さんからも聞いたことないですか?」
「橘さんから? そんなこともあったかな。あの人は、好き嫌いがはっきりしているからね。まあ、それがこのNOx計を導入する時は、役立ったがね。なかなか芯がしっかりしていて、自分の考えをどんどん言う人だよ。俺は、はっきりしていていいと思うけど」
「久保田さんもそう思っていたんですかね」
 朝倉は、探りを入れた。
「何が言いたいんだね。まさか君は、あの刑事が言ったことを信じたんじゃあるまいな」
「いえ、違いますよ」
「ならいいんだが…。あの雰囲気じゃ、下手なことを言おうもんなら、益々疑われるだけだったから黙っていたんだが、実は車を盗まれたんだ。親戚に不幸があって、たぶん家を留守にした時だと思うが、うかつだったよ。ちゃんと鍵はかけてあったんだが…。警察には、さっき、連絡が遅くなった理由を言っといたがね」
「何て?」
「家に帰って来た時間が随分遅かったからね。それで連絡は翌朝にしようと思ったんだが、つい、電話をかけそびれて、おまけにさっきまで刑事が来てただろ。そういうわけさ」
「警察は納得したんですか?」
「どうかな。俺は疑われているから。ところであの当時のことは、よく覚えてるよ。橘さんも熱心だったからね。最初から紀井電子の製品は、買う予定がなかったのだ。性能はいいが、あそこの機械は高いからね。それを大幅に値下げするから、と橘さんが言ってきた時は、正直言って驚いたね。俺は、会社に対して紀井電子の製品を推していたから、その通りになったわけだ。ただ、大東電子の製品を推していたグル―プからは、反感を買ったがね。それから機械のセット・アップが終わって、落ち着いた頃、田舎で取れたんだけど食べてくださいって、松茸を持って来たんだ。思わず笑ってしまったよ。普通、そんなもの持って来ないだろ。だから、ちょっと変わってるかな、とも思ったがね」
「大した気配りですね」
「さっきの寺井さんの話じゃないけど、俺がこの会社に入ったのは、自分でいろいろできると思ったからなんだ。姫路の分析センタ―では、自分のやりたいようにできなかったからね。その前は、工場で毎日決まりきった仕事をしていたんだ。俺は、一生このままで終わるのかと思った時、環境計量士の資格を取ろうと決めたんだ。物理や化学なんてもう忘れていたから、高校の参考書を引っ張り出してきたりしてさ。人は、生きてきた過程のほうが大事だなんて言うけど、そんなものに何の価値もない。俺は、そう思うよ」
 朝倉も同じ考えだった。だが、それは結果を出せた人間だけが言える言葉ではないのか。北村は、溜息を吐きながら、
「そんなことより故障の原因がわからない。連絡だけは区役所にするとして、会社に戻ろう。ついでにオキシダント計も見ておくか…。あれ―、キャピラリ―管にヒビが入っている。困ったな。すぐに会社へ戻って、新品と交換しなければ…」
 と言って振り返った。朝倉は、北村の背後からのぞき込むようにして見ていた。それは、口径八ミリ、長さ六十センチから八十センチの反応管だった。
「ほら、ここだよ。見えるだろ、これだけで七万円の損失だ。こんなものが続けて三回も



コラム(転職サイト)
ネット上には、いろいろな転職サイトがありますね。私は個人的には、そういう転職サイトを利用するよりも人材紹介業を利用することをオススメします。私が転職した時、人材紹介業を利用してきたからです。人材紹介業も利用する場合、無料です。転職サイトと何が違うのか。やはり最初から最後まで、フェイスtoフェイスの対応なので、転職する場合、信頼関係が醸成されます。転職する場合の、最も大事な点です。やはり最後は、人と人の問題です。その点で、私が信頼できる人材紹介業を利用してきた点です。そして人脈ではないでしょうか。ビジネスの現場で役に立つのは、いつの時代も人脈です。人脈の作り方ですが、ただ単に異業種交流会に出たからといって
簡単にいい人脈ができるとは限りません。名刺の枚数を増やすだけです。



suteru1 at 21:02  この記事をクリップ!

死者は眠らない 続編+コラム(転職について)

「ああ。君も知っているようにこの仕事には、環境計量士さえいればいいんだ。寺井さんも他の部長も常務も皆、役立たずの連中ばかりだ。そんな彼らに高い給料を払う必要がどこにあるというんだい。その分、我々の給料がもっと上がるじゃないか。彼らの言うことを聞いていると、時々阿呆らしいと思うときがある。そう思わないかい?」
 独立というのは、魅力であり、憧れだった。だが、会社を設立する資金は? 営業面は?そういうマイナスのイメ―ジばかりが、朝倉の中に潜んでいた。それに、同じ独立でも、朝倉は会社というものが嫌いだった。
 朝倉は、一点を見つめたまま黙っていると、彼の肩をポンと叩きながら北村は、
「あはは、あくまでも例えばの話だよ。そんなに深く考えることではない。君は、仕事でもそういうふうだから遅いんだよ」
「はあ」
 と言って朝倉は、苦笑した。だが、北村に皮肉を言われながらも、独立という言葉は朝倉の心を捉えた。北村は、本当に独立するのだろうか。独立するには、事務所の設立とともに分析機器を買い揃えなければならない。
 それにこの仕事は、単価が安いためにとても利益が見込めるとは思えない。利益を上げるためには、官公庁の仕事を安定的に取るか、大きなプロジェクトに付随した仕事を取るか、いずれにしても、設立後間もない会社にできるはずがない。
 それに、どの会社も積極的に遠隔地にまで出かけて行って、仕事の奪い合いを繰り広げている。この仕事は、都道府県単位で登録制になっていて、会社の数としては、もはやどの地域でも飽和状態にある。そういう中にあって、会社では早くから北関東地方に目をつけ、地歩を固めてきた。
 この地域には、古くから新潟県の会社が参入していたが、東京のベット・タウン化や、工場の郊外移転にともなって、新しく作られた大規模な工業団地に係わる仕事は、全て蓼科国土開発が押さえていた。それに、伝統的な地場産業から出る水質関係の仕事もするようになっている。
 これらは、北村が営業を担当していたが、まさか、この仕事を引き抜くのではないか?そうなれば、会社としても打撃は大きい。この男なら、充分それは考えられる。
 しかし、この仕事は一人ではできない。そこまで考えて朝倉は、はっとなった。まさか、寺井を利用するのでは?
「ところで、寺井さんがこの会社に入った理由は何ですか?」
「あまり言いたがらないから、詳しいことは俺も知らないんだ。たぶん、リストラか、それとも新幹線の仕事絡みか、わからない。何しろこの仕事は、東京・横浜・熱海・小田原・名古屋・大阪…と計画されていて、全部やることになると思うから…。それが何か?」
「え? そうなんですか」
 新幹線の仕事で大阪まで手を広げるのか。根も葉もない絵空事を今、考えているどころではない。朝倉の中に独立という話題はもう完全に消え去っていた。
「名古屋や大阪というのは、いつ頃なんですか?」
「まだわからないから正確なことは言えないが、熱海や小田原が済んだらすぐじゃないかな。確か君の田舎は、名古屋のほうだったね。その時は、アルバイトの手配頼むよ」
「はあ、寺井さんも一緒に行くんですか?」




転職について
会社が自分にとって合わなければ、転職したほうがいいと思います。転職は、大きな決断を伴いますが、自分を信じて、転職をすすめます。人生を前向きに考え、常に楽観的に人生を捉えることも時には必要です。正直言って、会社を変わり転職したからといって、あまり大差はありません。会社は会社でしかありません。だから転職を繰り返して、実際問題どこの会社に転職しようが大差はありません。それよりも転職をして、人生を前向きに考えることのほうがいいと思います。要するに自分の気持ちの持ちようです。会社の中で、自分をどういうふうに考えるか。意味もなく転職を繰り返すと、転職が失敗し、下手をすると路上生活ということにもなりかねません。転職は慎重に考えることはもちろんですが、慎重に転職を考えすぎて、人生を後悔することだけは避けたいと私は思います。

suteru1 at 20:56  この記事をクリップ!

死者は眠らない 続編

にもデ―タがあるから、どこまでできるかはわからないが、発見されないようにそういうレベルで修正するんだ」
「え―、やばいんじゃないですか? それにデ―タとして現実を反映していないことになりますよ」
 朝倉は、反発を覚えた。
「君の言うこともわかるが、これは会社としての信用の問題だ」
「どこがですか、逆じゃないですか」
 朝倉は、むきになった。北村は、感情的になっている朝倉をさとすようにゆっくりと話し始めた。
「以前は、こうした欠損を防ぐために数字を作ったこともあったけど、それは、まだテレメ―タ―・システムがなかった時の話で、今は、そんなことできなくなったんだ。法律で、デ―タは、一時間値で表わすことになっていて、それが二十四時間動いているわけだから、二十四回分の数字を一ヶ月間まとめて月報という形で区役所に出すのは、君も知っているだろう。それに、区役所でもつき合わせをするから、数字のごまかしはできない。確かに欠損は、発生させないことになっているが、我々はこの仕事だけをやっているわけじゃないんだ」
「そうですけど…」
「ちょうど巡回する日に、突発的な優先する仕事が入ったら、そちらに行かざるを得ないからこういうことも起こるのさ。我々は利益を追求する企業なんだ。そこが、区役所と違うところだよ。だから、できる部分で修正してクレ―ムは最小限に抑える。わかるかい?俺の言ってることが…」
 朝倉は、納得できなかった。それは、技術者のすることではない。事実を正確に把握することが、我々の役目ではないのか。だが朝倉は、口に出さなかった。北村は、続けて言った。
「数字は、作ろうと思えばいくらでも作れる。我々は、計量法で正しいデ―タを提供する義務があるが、会社が赤字になっちゃどうしようもないんだ。君は、寺井さんのことをどう思う?」
「どうって?」
「あの人もJRにいた時は、あんな調子で良かったと思うよ。だけど、企業の場合はそうも言ってられないんだ。その辺の切り替えが下手だから、俺と偶に言い争いになるんだ。寺井さんには人脈があるから、それなりに利用価値はある。だけど、会社がそこだけしか見てないなら、すぐに必要のない人間になってしまうんだ。今まで営業をやったことないって言ってたし、あの歳で自分を変えていくというのは大変なことだと思う。そう考えると、あの人のことが時々哀れに思えてくるんだ。俺だって、結局会社に利用されているんだから…」
「そんなことないですよ。環境計量士がいなくなったら、大変じゃないですか」
 朝倉は、阿った。
「あはは、俺の代わりなんていくらでもいる。君だっているし、小菅君だっている。結局そういうことなんだよ。君は、独立したいと思ったことはないのかい?」       「独立?」


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死者は眠らない  続編

「そこのスイッチどっちになっている? そう、それだ」
「測定モ―ドです」
「調整モ―ドに切り換えてくれないか」
 朝倉は、測定モ―ドをOFFにしながら、
「この後、どうするんですか」
「そこの壁に番号が書いてあるだろう、それに従ってそこのKEYを押すんだよ。そうすれば、中で電磁バルブが開くから、その後は…」
 北村は、早口で言った。どことなく苛ついているようだった。説明するより、自分でやったほうが早い、とでも言いたそうな雰囲気である。
「流量計の針が動かないです。ちょっとお願いしますよ」
 北村は、NOx計の前に回り込みながら、丹念にその周辺を調べ始めた。朝倉は北村の背後に回り、スパン調整を最初からやり直してみたり、反応液が間違いなく電磁バルブの開閉によって送られているか等を調べた。                 
「おかしいな。どこも悪いところはないんだが…」
 北村は、何度も首をひねりながら、機械の奥のほうまでのぞき込んだ。
「やはり、いたずらですか」
「きまっているじゃないか。あれ―、こんなところに過マンガン酸カリが付着している。何故だろう。そこの過酸化水素と蒸留水を取ってくれないか」
 と北村は、部屋の入り口付近を指さした。
「原因がわかったんですか」
「いや、今回のこととは関係ない。それに、この程度なら問題になるようなことはないし、これがもっと広がると、ここの圧送ポンプの駆動が悪くなって、酸化剤を酸化層に送らなくなるんだ」
 朝倉は、じっと聞いていた。そして
「もう古いんですよ。電気的な問題もあるんじゃないですか?」
「そうだな」
 北村は、声を落として言った。それ以上、触れたくないようだった。
「機械のほうじゃないということはチャ―トですか? でも直接の原因としては考えられないと思いますが…」 
 朝倉は、チャ―ト速度のスイッチをOFFにして、カバ―を開けた。
「やれやれ、チャ―トが引っかかってますよ。これじゃ紙が送られないわけだ。早瀬君は、月曜日に巡回に来たのかな。こういう時に携帯電話があると便利なんだが…」
 朝倉の脳裏に、一瞬、ゆかりのことが浮かぶ。
「そういえば、橘さん心配してましたよ。いろいろあったそうじゃないですか。さっき、駐車場で会ったんですよ。北村さんに用事があると言って、待ってもらっています」
「そう。橘さんがそんなこと言ったの。他には?」
 北村は、顔をしかめながら、朝倉の顔をじっと見つめた。
「いえ、別に…」
「そうか、思い出したよ。月曜日は、新幹線の測定の打ち合わせに、急きょ早瀬君を連れ出したんだったな。彼が戻ったら、修正できるところはなるべく修正させるんだ。区役所

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死者は眠らない 続編

土開発には社用車は二台あった。レガシ―・ツ―リングワゴンと、乗用車のアベニ―ルだ。
(おかしいな。ミ―ティングをしている間に、誰かが乗っていったのだろうか?)
 ゆかりが言うように、もしかしたら、という気持ちがあったので、何だか急に気になり始めた。この男に聞いても仕方がないと思いながら、ひょっとしてということもあるので訊ねると、十分ぐらい前に小菅が修理工場へ持っていったということだった。
「何! 修理工場。で、場所は?」
 と聞くと松原は、さあ、と言って首を横に振った。すると少し遅れてやって来た北村が、
「どうしたんだ、そんなところで話してないですぐ出かけるぞ」  
 そう言って助手席に乗ると、松原はすぐに車を走らせた。そして十分ぐらい経った時、不意に北村は口を開いた。
「車は、何に乗っているんだい?」
「どうして、また?」
 松原は、不審そうに聞く。
「いや、運転がうまいなと思ったからさ」
「そうなんですか。GT―Rですよ。その前は、チェイサ―でしたがね」
「ふ―ん、R34かい?」
「いえ、そこまでは…。もうかなり古いですから…」
「R32か…。だとすると、ステアリング・インフォメ―ションがいまひとつだろう」 「ええ、アンダ―ステアが強くスピ―ドを出さないとおもしろくないというところはあります。フロントが重いですからね。ただ車自体の扱いやすさは抜群ですよ。ドリフトさせてもリヤのスライド量は自分で決められるし、初めて乗った時コイツは凄えって思いましたね。乗ったことあるんですか?」        
「話には聞いたことがある。ところで君は、小菅君とはどういう知り合いなんだ?」
「別に。昔、ちょっと一緒に働いたことがあっただけですよ」             松原は、顔を歪めながら口を尖らせた。          
「ほ―、すると製薬メ―カ―にいたのか?」        
「違いますよ。自動車メ―カ―で車の開発に携わっていたんです。といっても俺は、ただのドライバ―でしたがね」       
「どうりで運転がうまいと思ったよ」              
 北村は、座席に深く身体を沈めて両手を頭の後ろで組み、フロントガラスにはねかえる小さな雨滴をぼんやりと眺めていた。  
 今、彼の頭の中は、異常を示したテレメ―タ―のことで一杯だろうか。いや、むしろ間垣刑事の言った言葉を思い出しているのかもしれない。
 幸い雪谷には、本格的に降りだす前に着いた。北村は、松原に先月の調査結果の入った封筒を渡して、区役所の担当者に届けて戻ってくるように指示して車を降りた。北村と朝倉の二人は、雨に濡れないように車を降りると急いで建物に向かった。
 この雪谷地区には、各々異なった分析計が、五台設置されている。区役所の環境保全課から連絡があったのは、NOx計だった。二人は、早速、部屋の中に入った。部屋は、二十四時間エアコンが稼動し、常に摂氏二十五度Cに保たれている。北村は、眼鏡を分析計の上に置くと、額の汗を拭きながら、


suteru1 at 18:24  この記事をクリップ!

死者の結婚式

でもないと思う」
「そうかなあ? ところで早瀬さんのことだけど…」
「彼は、昨夜、接待だったんだ。場所? 池袋だよ。東口を降りて、映画館のあるサンシャイン通りの近くに『風雲亭』という串焼の店があるんだが、そこに九時頃まではいるって聞いたけどね。そのあとのことは知らないが、そこは川越街道とつながっているから、もし疑うんだったら、早瀬だって怪しいことになる。事故現場まではすぐだからね。しかし、ちょっと考えられないな。僕は、むしろ北村さんを疑うね。彼のボタンが落ちていたというのが何よりの証拠だよ」
「逆じゃないかしら。それだと、あまりにも北村さんへの疑いがはっきりしすぎるわ。却って、変だと思うの。それに久保田さんは、酒を飲んでいたんでしょ。う―ん、よくわからないわね」
 と言ってゆかりは、こめかみの辺りを軽くとんとんと叩いた。長い髪が、さらっと左に揺れる。
「北村さんは、君のことが好きなんだろ。最近冷たくしていたんじゃないの?」
 ゆかりは、はにかみながら、
「関係ないわよ。でも、何だか変に意識しちゃって、自分でも知らないうちによそよそしくしているのかもしれないわね。いずれにしろ、単なる交通事故じゃなさそうね。いろいろ調べてみたいことがあるんですけど、もちろん協力してくださるわね」
 ゆかりは、きりっとした表情で朝倉を見た。険しい顔をしている。
「う、うん」 
 朝倉は、その表情に圧倒されてしまった。美しい顔立ちだが、少し目がきつすぎるのだ。それで何となく性格も気が強そうに感じられる。
 やがて朝倉がお通夜と葬式の日取りを話すと、ゆかりは、
「じゃあ、北村さんが戻って来るまで、少し待たせてもらっていいですか」
 と言った。ゆかりは、新製品の説明をするために会社に来たはずだったのに、この原因のほうに気持ちが向いているようだった。さっきゆかりは、田舎には何の未練もなく、生き甲斐をこの東京で見つけたい、と言っていた。
 そこには、性格的なものが感じられたが、今思うと、どことなく切羽詰ったものが漂っていたような気がする。そういう気持ちで改めてゆかりを見つめ直すと、何かの事情があるような気がする。ゆかりがどんな過去を持っているのかは知らないが、少なくとも自分と共通するものがあるような気がした。
 その時、朝倉の頬を冷たいものが掠めた。
(おや、雨か―)
 朝倉は、雨が嫌いだった。濡れるのを少しでも避けようと手を頭の上にかざしながら、駐車場に向かった。すると、すでに松原がワゴンに乗り込んでいた。ポケットからタバコを一本つまみ出し、その先端を人差指の爪で軽く打ちつけてから、火をつけている。そして、少し赤茶けた豊かな髪をスプレ―をきかして丁寧に分け、運転席のミラ―をのぞいていた。
 朝倉が近づいても、彼は表情ひとつ変えずに髪をいじったり、紫煙をくゆらせている。ふとワゴンの隣りを見ると、昨日、新潟から乗って帰った乗用車の姿がなかった。蓼科国

suteru1 at 18:31  この記事をクリップ!

死者は眠らない

だ」
「でも、そう決めつけるには、ちょっと早すぎるんじゃないかしら。発信者の欄は見なかったのですか?」
「ああ」
「じゃ―、どこから送られたかはわからないわね」
「どっちみち、わかんないよ。そんなヘマはやらないだろうからね。むしろ、何か思い当たる節はない?」
「ないです。いたずらに決まってるじゃない。そんなことして誰が得するのよ」
「そうだね。お互いの会社の、イメ―ジ・ダウンになるだけだからね」
 それよりも朝倉の関心は、久保田の交通事故にあった。『蝶が飛んでいた』という不可解な言葉に加えて、『蝶』と書かれた通帳、それに数字が書かれた謎の紙切れ、現場に落ちていた北村のボタン。
 刑事の言ったことが一つ一つ頭に浮かぶ。更に気になるのは、昭和工業のことである。朝倉は、昭和工業のことを除いて、それらのことをゆかりに話した。ゆかりは、宙を見つめたまま黙って聞いていた。朝倉の喋っていることに耳を傾けながらも、何かを考えている様子だった。
 そして朝倉が話し終わった時、ゆかりは真っ先に言おうとして考えていた言葉を口に出した。
「久保田さんは、事故じゃないかもしれない。仮に事故だとしても、何かがあったんじゃないかしら。今朝、現場を目撃した人がいたって言ったわね。その人を探し出して確かめてみる必要があるわ」
 口紅を薄く引いたゆかりの唇が、微かに震えている。
「ふむ」
「それと、振り込まれたお金のことですけど、『蝶』とどんな関係があるのかしら。私には、小菅さんは嘘を吐いてるとしか思えないわ。BODの修正ぐらい何でもないわよ。だってCODがわかっているわけでしょう」
「ちょっと待ってくれ、いくら何でも、それは言い過ぎだ。我々の仕事は、物を造っているわけじゃなく数字が全てなんだ。それをいい加減でもいいというのは…」
「あら、ほんとにそうかしら? まず第一に考えることは、売上げよ。どんなにりっぱなデ―タでも、そのためにコストがかかりすぎて会社が倒産してしまったら、何にもならないわ。止めましょう、今は、こんなこと話していても仕方がないから…。私が言いたかったことは、もっと他の理由だったんじゃないかってこと」
「他の理由?」
「何か他に守りたいものがあるから嘘を吐くわけでしょう。でも本当のことは調べてみないとわからないけど、金回りが良かったことだけは、わかったわね。それに朝倉さんは小菅さんと一緒だったって言うけど、事故はその後に起こったわけでしょ。小菅さんと別れてからどのくらい経ったの? 四、五分? そのくらいあれば、引き返すのに車だったら充分だわ。車を見てみたの? 何か傷でも残っているかもしれないわよ」
 朝倉は、頭を振りながら、
「僕は違うと思うね。それに、もし細かいキズがあったとしても、素人が見てわかるもの

suteru1 at 21:23  この記事をクリップ!
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